
ビジネスの世界では『二八』(にっぱち)
っていう言葉が使われること、ありますよね?
2月と8月は売上が落ちる、という“あれ”です。
理由として、2月は年末年始でイベントが
続いた反動から、8月は暑すぎてお客さんの
購買意欲が落ちるから、なんていわれます。
業界によりますので(チョコレートは年間の
2割がバレンタインデーに消費されるとか)、
一律にそうだ、という訳ではありませんが。
『二八』がどうあれ、景気や為替の影響、
個々に見れば競合の動向などで売上が厳しく
なる時ってありますよね?
そんな時の販促策として一般に
行われることが多いのが各種セール。
つまり、1件当たりの利益額(率)を
落としても、数を追うことで一定の
利益を獲得する手法のことです。
これ、決して間違いではありませんが、
その際、絶対に忘れてはいけないことが
あるのをご存知ですか?
今日はそんな話をしたく思います。
心理学実験からわかった驚きの事実
まずは、アメリカの女性心理学者
エレン・ランガーのチームが行った
実験結果をご紹介しましょう。
彼女は図書館のコピー機の前で並んでいる
人達にこんな風に声をかける実験をしました。
「すみません、5枚だけなんですけど、
急いでいるので先にコピーを
取らせてくれませんか?」
すると、なんと94%、つまり
ほとんどの人が応じてくれたんだとか。
並んでいる人の中には、急いでいる人もいたと
思いますが、「急いでいるから」と理由を告げ
られたことで譲ってくれたのでしょう。
人の行動は理由の有無で変化
そこで次に、並んでいる人達に、
こんな風に声をかけたんだそうです。
「すみません、5枚だけなんですけど、
先にコピーを取らせてくれませんか?」
すると、譲ってくれた人は一気に減って
60%になってしまったとのこと。
「急いでいるから」というのはある意味、
勝手な都合ではありますが、納得できる
理由があるかないかって重要なんですね。
2つの言葉の違いは、既にお気づきの通り、
「急いでいるので」という言葉が
あるかないかだけですから。
納得できる理由って本当に重要?
果たしてそれは事実でしょうか?
実は彼女のチームは3つ目の実験もしました。
今度は並んでいる人達にこういったんです。
「すみません、5枚だけなんですけど、
コピーを取らなければいけないので、
先にコピーを取らせてくれませんか?」
「コピーを取らなければいけないので」
って、理由といえば理由ですが、全員が
そのために並んでいるわけですよね?
ところが驚くことに、こんな理由とは
いえない理由であっても、なんと93%の
人が譲ってくれたんだそうです。
そう、「急いでいるから」という理由の
時とほぼ同じスコアになったんですね。
ここからいえること、それは人が理由の中身に
関わらず、それが添えられることで頼みごとが
通りやすくなる、という事実。
理由を明示していますか?
さて、本題に戻りましょう。
一年を通じ、販促策の一環としてさまざまな
セールやキャンペーン等が実施されるでしょう。
売上のカンフル剤として、それは必要なこと。
問題は、「その際に、理由をきちんと
明示していますか?」ということなんです。
季節イベント(決算セール/歳末売り尽くし等)
や周年祭など、その理由をお客さんが簡単に把握
できる場合、示さずとも伝わるかもしれません。
でも、それ以外の時期とか、特定の商品に
限定したセールだってありますよね?
そういった際、なぜセールを行うか
きちんと理由を示しているでしょうか?
「在庫処分に付き、半額」とか
「商品入れ替えのための大処分」とか。
仮にそういったそれなりの理由がなかった
としても無理にでも理由は必ず付けてください。
「あまりにも暑い(寒い)から大売出し」なんて
いうのも、理由がないよりマシです(笑)。
それによって、あなたの商品を購入しようと
する人が増えていくはずですから。
コピー機の実験を思い出していただけますか?
「コピーを取りたいので」という、えっという
理由ですら人は応じてくれるわけですから。
PS
今回ご紹介した内容、
カチッ・サー効果といわれます。
名前の由来など、その詳細を知りたい方は、
ロバート・B・チャルディーニ著『影響力
の武器』をご一読くださいませ。
PS2
値引きと割引は、会計の世界では全く
異なる概念ですが、集客の世界においては
要は安売り、ということでご理解願います。