過剰サービスがクレームを引き寄せる!?

From:伴走(Together Run)金子誠志

今日は、先日出向いた某全国チェーンで
遭遇した事例に絡め、記したく思います。

そのお客さんは突如ふらっと現れた!

そこは深夜まで営業する飲食店。
リーズナブルな価格を売り物にするお店です。

私が出向いたのは24:00を回った頃でした。
そんな時間ですから、お客さんはまばら。

席に案内された私は、注文を済ませ、
料理が出てくるのを待っていました。

そんなタイミングに、その驚愕すべき
お客さんはやって来たんです。

店員さんが案内したのは、私のすぐ近くの席。
お客さんは席に座るやいなや、やって来た別の
店員さんに話しかけ、やり取りが始まりました。

メニューって手渡しするものだろ!

客「とりあえず、ビールくれる?
 ビンビールはあるの?
 あるならビンが良いな」

店「ビンもあります
 1本でよろしいですね?」

客「いきなり2本は飲めないだろ。
 少し考えてしゃべってくれよ
 メニュー、見せて」

店「テーブルの下に入っていませんか?」

客「テーブルの下ってどこだよ?」
 と独り言のようにしゃべりつつ、メニューを
 探し、見つかると「これか?」と。

店「はい、そちらがメニューです」

客「おいおい、だいたいにしてさ、
 客がメニュー見せてっていってんだから、
 『こちらがメニューです』って手渡すものだろ

店「失礼しました」

客「なってないな、この店は。
 早くビール、持って来いよ」

店員さんはすぐさま、ビールとコップを
手に舞い戻り、お客さんに差し出しました。

そのくらいやってくれたっていいだろ!

すると、再び2人の会話が始まったんです。

客「この○○っていうセットが
 良いんだけど、セットの××は苦手なんだよ。
 こっちの◇◇に変えてもらえる?

店「申し訳ありません、そういったことは
 できないんですけど・・・」

客「なんで?だって、両方とも
 この店で提供しているものだろ?
 それくらいやってくれたっていいんじゃない?」

店「申し訳ありません。
 それですと、単品注文になってしまいますが」

客「じゃあ、いいよ。
 ○○っていうセットでいいけど、
 ××は見るだけで気分が悪くなるから抜いて」

店「かしこまりました。
 出来上がりまで、少々お待ちくださいませ」

客「あのさ、テーブルが汚くないか?
 ちゃんと拭いてる?」

店「申し訳ありません。
 すぐに拭き直します」

客「だいたいさ・・・」

こんな感じで、そこまで文句をつけるか
っていうくらいに諸々連呼していました。

会計の際、再び大噴火!?

あ、ちなみにそのお客さん、来店の時点では
酔っている雰囲気はありませんでしたね。

ですが、店の対応が相当に
お気に召さなかったのでしょう。
食事中もぶつぶつ独り言をいっていたんです。

極めつけは、お会計のタイミング。
私が座っていた席はレジからも近かったため
そのやり取りが全て聞こえてきました。

お会計も、その文句をいわれた
店員さんが対応することになったようでした。
まずはお客さんが伝票を渡したんです。

店「○○円です」

客「お前さ、接客がなってないんだよ。
 客がメニューっていったら手渡しが基本だろ。
 セットが変えられるかだってキッチンに聞けよ」

店「・・・」

客「そんな接客しかできないから、お前、
 こんな店でしか働けないんじゃないか?
 ダメな奴にいくらいってもムダだろうけどさ

そんな捨て台詞を残し、
そのお客さんは店を後にしたんです。

確かにその店員さんは、私に対応してくれた
際もどちらかといえばスローモード。
スピードに欠ける感じはありました。

といっても、そこは高級店ではありません。
それを考えれば、私には十分に満足できるレベル。

過ぎたるおもてなしが時にクレームに

さて、一般に日本では、金額の大小にかかわらず
お客さんの過剰な要求にも対応するケースが
少なくありません

それは一面で『おもてなしの心』として日本の
価値を高めてくれているのは、ご存知の通りです。

しかしながら、それが過剰と
なれば、対応する従業員が疲弊してしまう

最悪の場合、辞めてしまうかもしれません。

今は人手不足時代、メンバーが
去ってしまえば、戦力ダウンは免れません。

だいたいにして人が育つには時間がかかります。
人が退職してしまうということは、その歳月が
ムダになったことを意味しますよね?

『企業は人なり』といわれるように、企業が
存続し続けるには従業員はこの上なく重要

ですから、自社に馴染まないお客さんとは一定の
距離を置く
、という取り組みが欠かせないんです。

研修翌日に人が辞めていく恐ろしい現実

ここで、とある大手企業の例をご紹介しましょう。
その企業は、アフターサービスにそれなりの
工数がかかる商品を扱っています。

そのための対策として、数百人規模の
コールセンターを設けていたんです。

今は対応品質に問題などがあれば、
SNSなどを通じ、すぐに拡散する時代。

ですから、コールセンターは新たな人員を
採用すると1ヶ月間、徹底的に研修を行います。

その間は試験的に電話を取らせる、
なんていうことも一切しません。

いよいよ研修を終え、実践初日。
ところが時に、いわゆるクレーマー的な人に
当たってしまうことがあるんです。

するとどうなるか?
即刻辞めてしまうんだそうです。

1ヶ月間、研修しか行っていませんから、
企業からすると完全に経費持ち出し状態。
当たり前ですが、売上貢献「0」です。

ところが、いよいよこれから売上に貢献して
もらおうとした矢先に退職してしまう訳です。

それって、本人はもちろんですが、
会社にとってもとてつもなく大きな痛手。
ですから、そういう事態は避けなければならない。

中小企業ではお客さんの絞り込みも必要

さて、ではどうすればいいか?

そこで採用すべきが、上述のように自社商品
サービスレベルから見て、過剰な要求をする
お客さんとは距離を置く、という取り組み。

具体的には「その要求には応えられません」
お客さんに伝える、あるいは「サービスを
有料化する」
などの方策が挙げられます。

もちろん、そのためには、どういったものが
過剰に該当するかといったことを社内で
具体的に共有しておく
必要があります。

間違ってもそこを現場の
一個人の判断に任せてはいけません。
そこは経営者が考えるべき分野。

お客さんが減るのを恐れ、経営者はなかなか
お客さんと距離を置くという行動を取りません。

ですが、一般に過剰な要求をするお客さんって、
利益面で貢献していないことがほとんど。

そのお客さんに関わる時間を利益面で
貢献してくれるお客さんに使えば、さらに
利益貢献してくれる可能性大

なぜって、そういうお客さんってあまり
わがままをいわない一方、接触頻度を高めると
そこに価値を感じてくれることが多いから。

ところがそういった上顧客を放置しておくと、
黙って去って行ってしまうことが
少なくないんです。

ですから、そうなる前に無理をいうお客さんとは
距離を置き、利益貢献してくれるお客さんに
時間を注ぐのが一番のおススメ。

こういった取り組みは、特に中小企業においては、
お客さんの絞込みという観点からもとても
意味あること、といえます。

もしかしたら、おもてなしのつもりで
個別対応したその(過剰)サービスが
クレームを引き寄せているかも
しれません。

そんな視点で社内を点検してみるのも
悪くないと思いますが、いかがでしょう?

PS

お客さんと距離を置くといっても、当たり前
ですが、表面上の言葉遣いは超丁寧が基本。

ここでしくじってしまうと、相手の毒牙に
見事にはまってしまいますから、注意ですね。

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