サービスを標準化していますか?

From:伴走(Together Run)金子誠志

前回、自社商品・サービスに応じ、対応レベル
に強弱をつけるべき、という話をしました。

おもてなしの心は大切ですが、それによって
現場に無理が生じれば、従業員が疲弊し、
遂には退職者を出しかねないからです。

そのためには、会社(店)として、
なにをどこまで提供(サービス)し、
どこからは断る(有料化する)か。

そういったことを具体的に社内で共有して
おかなければならない、そんなお話をさせて
いただきましたが、ご記憶ですか?

今回も、そういった点に関する
話をさせていただこうと思います。
再び事例を絡めつつ説明させてください。

Yさんの出現で状況が一変

その事件は、とある飲食店で勃発しました。
その店は県内に3店を構えるチェーン店の1つ。

立地は3店で少しずつ異なりますが、
基本的にどこも同じメニューを提供するスタイル。
仮にそれら3店をA店/B店/C店としましょう。

デコボコはありますが、3店の売上はドングリ
の背比べのような状態で推移していました。
そう、A店にある女性が採用されるまでは。

ある日、A店に勤めていたパート女性が
都合により退職することになったんです。
代わりに採用されたのが、Yさんという女性

店長曰く、「人当たりが良く、はきはきしていて
感じがとても良かったので採用したんです」
といっていました。

ドングリの背比べが崩れた!

Yさんの採用効果は間もなく売上実績に現れます。
Yさん、とにかくよく働く人だったんです。

それだけではありません。
その接客が“絶妙” だったとか。

いつも笑顔、気配りが行き届くのはもちろん、
新メニューが出ると、誰からいわれたわけでも
ないのに積極的にそれをお客さんに勧めます。

今までだと定食だけで済ませていたお客さんが
追加の小鉢を頼む、晩酌のお客さんからは追加
オーダーを次々に取ってくる、といった感じです。

採用から3ヶ月も過ぎる頃には、
Yさんの接客目当てで通うお客さんも
現れるような状態になっていた、とのこと。

結果、ドングリの背比べだった3店からA店
だけが頭一つ抜け出すのが常となったそうです。

いつもそうしてもらっているんだから!

そして、その事件はYさんが採用され
9ヶ月が経った頃に起こりました。

その日を含め、Yさんは私用のため、
一週間ほど、お店を休んでいたんだとか。

そんな中、それを知らず、
常連のお客さんが来店したんです。

お客さんは、Yさんがいないことを
寂しがりながらも、よく注文していた
セットメニューをオーダーしました。

そして、こう付け加えたんです。
「あっ、セットの飲み物はビールにして」

対応した男性店員は答えました。
「申し訳ありません、ビールはセットメニュー
 には含まれないんですけど・・・」

すると、お客さんがすかさず答えました。
「そんなはずないでしょ。いつも
 そうしてもらっているんだから」

善意がきっかけだったとしても・・・

対応した店員さんは困ってしまい、店長に相談。
結論からいえば、それはYさんが勝手に
行っていたサービスだったんです。

そのお客さんには事情を説明しましたが、
納得してもらうことはできず、立腹し、
食事もせず帰ってしまったとのこと。

休暇が終わり出社したYさんに店長が確認すると、
常連のお客さんにはYさんがオリジナルサービス
として提供していた、ということが判明しました。

もちろん、Yさんは悪気があってそんな
過剰サービスを行ったわけではありません。

店長から「3店がドングリの背比べなんだけど、
そこから抜け出したいんだよね」と聞いていた
ため、少しでも貢献しようという善意からでした。

でも、それって、お店のルールを逸脱した行為。
結果として、立腹したお客さんはその日以来、
お店に来なくなってしまったそうなんです。

Yさんも居づらくなったのでしょう。
間もなく「家庭の事情で」といって
退職されたとのこと。

対応品質のばらつきを防いでいますか?

さて、振り返ってあなたの会社・お店では
サービスは標準化されていますか?

もちろん、個人で努力できる範囲の
おもてなしについては、積極的に
取り組んでもらうべきでしょう。

笑顔やちょっとした掛け声一つで
お客さんの心証は大きく変化します。

でも、それを逸脱してしまっては、A店のように
結局は会社(お店)が信用を失うことに。

標準化、言い方を変えればマニュアル化は
一定レベルの水準を維持する、という
意味
で不可欠なこと。

人によって提供する商品・サービスに差が
あり過ぎては、個人商店の集合体に
なってしまいますよね?

それでは組織といえません。

さて、あなたの会社(お店)では、
標準化が徹底されていますか?

最低限、ここまではきっちりやろう、
でもこれ以上はやめておこう、そういった
ことを具体的に共有
している、という意味です。

なんだかんだいわれながら、マクドナルドが
強いのは、標準化が徹底されているから。

年に一度くらい、そんな視点で
社内を点検してみるのも良いと
思いますが、いかがでしょう?

PS

誤解があるといけませんので、
念のため記します。

標準化とは、全てをがちがちに縛る、
ということでは、決してありません。

例えば担当外のお客さんを対応したとしても
一定レベルの品質を提供できる、それが
真の標準化(マニュアル化)ですよね?

PS2

関連する以下記事も併せご覧ください。
サービス標準化の考え方・その事例
お客さんの要望には応えるべき!?

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